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年末に向けて議論進む 第130回介護保険部会 染川会長発言

2025年12月03日掲載

12月1日(月)、「第130回社会保障審議会介護保険部会」が虎ノ門グローバルスクエア(東京都 港区)で開催され、染川朗会長がWEBで出席しました。

今回も前回に引き続き、いわゆる“給付と負担”について議論されました。
染川会長は、論点として示された『一定以上所得、現役並み所得の判断基準』と『ケアマネジメントに関する給付の在り方』について意見を述べました。

●2割負担の基準の引き下げに反対。「利用控えにつながる」
論点:「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
これまでの議論を踏まえ、今回、自己負担割合2割とする具体的な基準が示されました。
厚生労働省は、現状の単身世帯の所得金額「280万円以上」の基準を、あらたに「230万円以上~260万円以上」としてはどうか、と提案。
あわせて、配慮すべき点として「当分の間、新たに負担増になる者に、月7,000円の負担増の上限を設ける」こと、「預貯金等が一定額未満の者は申請により1割負担に戻す」こととされました。

染川会長は、「年収別の収入と支出の状況から、介護サービス利用を前提とすると、最低限の暮らしすら営むことが厳しいことが想定される。2割、3割の負担割合ということは、負担する側からすると2倍、3倍の負担であり、生活への影響は極めて大きく、慎重に判断すべき」と述べ、基準そのものの引き下げに、引き続き反対を表明しました。
さらに染川会長は、「預貯金等の金融資産の保有状況を反映する方向性については理解できる」としつつ、1割負担に戻すとされる預貯金の水準にある対象者が、全体の20%から50%程度であることから、「この水準はではあまりに低い」と指摘しました。
そのうえで、「利用者が経済的不安を理由に利用控えをすることが懸念され、自己申告による運用は様々な問題が生じるため適切とは思えない。まずは、分離課税となっている配当金や金利収入等の合算を制度化し、確定申告の有無による不公平を是正することや、マイナンバーカードの利活用等により、適切に金融資産の把握を可能とすることが必要であり、現在の状況・環境のまま進めることについては拙速であると言わざるをえない」と述べました。

●ケアプランの利用者負担の導入にあらためて反対を表明
論点:ケアマネジメントに係る給付の在り方
前回の第129回で議論された内容を踏まえ、改めてケアプランの利用者負担、業務負担の在り方について議論されました。

染川会長は、NCCUの『2022年度就業意識実態調査』から、ケアプラン有料化についてケアマネジャーのみに絞り込んだ分析結果について次のように報告。
「“現行のケアプラン10割給付を維持すべき”との回答は71.9%だった。それに対し、“利用者負担を導入するべき”との回答はわずか1.8%に過ぎない。さらに、ケアマネジメントの利用者の所得状況を勘案することについて“利用者の所得に応じた配慮があれば利用者負担を導入した方がよい”との回答は14.9%にとどまった。
また、回答者が反対する理由は、“負担増によるサービス利用の抑制”、“ケアマネジメントの公正性・中立性の担保”、“業務負担の増加と処遇の問題”、“経済的負担による不公平感と負担の増加”、“利用者・家族との信頼関係・相談環境の悪化”などがあがった」
染川会長は、そのうえで「現場からもこれだけ多くの課題が指摘され、場合によっては財政健全化どころか副作用によって費用の増加すら懸念される中で、利用者負担の導入という判断をすることはあってはならない」とあらためて反対しました。
そのほか、厚労省の示す“給付管理の事務業務を利用者負担としてはどうか”との案についても同様に反対意見を述べました。

●他産業と比較して遜色ない処遇の実現を改めて求める
“給付と負担” の議論のテーマに加え、これまでの議論について論点ごとの整理が行われました。これを受けて染川会長はそれぞれ以下の意見を改めて述べました。

論点① 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
「特例介護サービスの枠組みの拡張において、新類型での人員基準緩和の方向性が示されている。しかし、労働負荷の増加が懸念されることから、管理者や専門職の常勤・専従要件の緩和については、従事者の労働負荷の増大やサービスの質の低下につながらないよう、慎重に検討する必要がある。また、現場の実態を踏まえると、夜勤要件まで含めて緩和することには反対である。
中山間・人口減少地域において介護サービスを事業として実施する仕組みの方向性として、地域支援事業の一類型として実施し、高齢者の伸び率等を考慮した上限額を設定する案が示されている。しかし、この事業が介護保険サービスの代替であることを踏まえれば、本来は介護保険事業として実施すべきであり、予算に上限を設けるべきではない」

論点② 地域包括ケアシステムの深化
「ケアマネジャーの更新制・法定研修の見直しにおいて、研修受講を担保するため、事業者に必要な配慮を求めるとしている。しかし、厚生労働省が示す『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』では、業務上義務づけられた研修や、不参加により業務が行えなくなる研修は労働時間に該当するとされている。したがって法定研修については『配慮』の範囲ではなく、事業者に対して研修受講時間を労働時間として適正に処理させることを徹底すべき。また、事業者が研修受講機会を確保し、その費用を負担することも義務づける必要がある」

論点③ 総合的な介護人材確保対策
「国は介護職員の処遇改善に取り組んできたとしているものの、その内容は不十分と言わざるをえない。近年の他産業における大幅な賃上げにより賃金格差は拡大しており、ケアマネジャーを対象外としてきたことで、経験やスキルに見合った処遇が実現できず、職種間の賃金バランスも崩れている。人材確保に最も効果があるのは処遇改善であり、介護職員のみならず関連職種も含めた介護従事者全体について、他産業と比較して遜色ない処遇を実現するため、目指すべき水準と時期を明確に示したロードマップを早急に提示してもらいたい」

同部会では、年末に向けて引き続き議論が行われます。NCCUは、各種調査結果や組合員の皆さんの声をもとに発言を続けていきます。

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今回の資料は第130回社会保障審議会介護保険部会|厚生労働省に掲載されています。

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