10月27日(月)、第127回社会保障審議会介護保険部会が虎ノ門グローバルスクエア(東京都港区)で開催され、染川朗会長がWEBで出席しました。
今回、議題として次の3点があげられました。「1. 介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営改善支援等」、「2. 地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」、3. 持続可能性の確保」。
これについての染川会長の発言内容を報告します。
●賃金格差の拡大が続けば介護現場の維持が困難となる
議題1「介護人材確保と職場環境改善、生産性向上、経営改善支援等」
論点のひとつに「職場環境改善に向けたハラスメント対応の取り組み」があげられました。
6月に、カスハラ防止を雇用管理上必要な措置を事業主に義務付ける、いわゆる「カスハラ対策法」が成立しました。これを受け、これまでのパワハラ・セクハラ対策に加え、カスハラについても対策を義務付けるとともに、対応マニュアルの見直しや自治体・介護事業所への周知を徹底するといった措置を講ずることが提案されました。
染川会長は、「介護職員に危害がおよぶ事案が頻発していることから、そうした事態が予見される際の対応を踏まえ、現在のマニュアル、手引きを見直してもらいたい。
また、すでに一部の自治体では、訪問系サービスで臨時に介護職員を増員して複数人による介護を行う必要がある際、人件費の増加分を事業所に支援している。
こうした支援等を訪問系、施設系のサービスを問わず、国として標準化することを検討してもらいたい」と求めました。
さらに染川会長は、議題に『介護人材確保』があることを踏まえて発言。
「介護職員数が減少に転じている要因が、他産業が大幅に賃金改善を進めるなか、介護従事者との賃金の格差が拡大、他産業への人材流出が起きていることは容易に想像できる」としたうえで、『2025年度就業意識実態調査』を引用。
「“労働条件がよくなるなら介護業界ではない他社へ転職したい”との回答が月給制で29.1%、時給制で20.6%に上る。この結果からも、今の格差拡大傾向が続けば介護現場は崩壊する。人材確保のために最も重要な介護従事者の処遇改善について、あるべき水準を明確にするとともに、その実現に向けて早急に議論を進めてもらいたい」と強く訴えました。
●ケアマネ更新制が廃止へ NCCUの意見が反映される
議題2.「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」
この議題で、「ケアマネジャーの更新制・法定研修の見直し」が論点としてあげられ、そのなかで“更新研修の受講を要件とした介護支援専門員証の有効期間の更新は廃止してはどうか”と提案されました。つまり、“ケアマネの更新制の廃止”が方向性として示されました。
この意見は、『ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会』等でも、NCCUが訴えてきたことです。
染川会長は、NCCUがかねてからケアマネ更新制廃止訴え続けてきたことから、論点として示されたことに謝意を述べた上で、検討内容の全面的な支持を表明。
「更新制が廃止されることで、今後の法定研修の位置づけが明確になる。現状では更新研修が職務遂行するうえで必要な研修なのか、資格保持のための研修なのかが不明確で、労働時間として扱われないケースが生じていた。更新制の廃止は、こうした様々な課題の解決につながるものと思う。
引き続き、時間的負担と経済的負担を軽減できるよう、今後の法定研修の内容改善等も含め、早期の見直しを実現してもらいたい」と述べ、更新制廃止の意義をあらためて強調し、さらなる取り組みを求めました。
~これまでのNCCUの発言と経緯~
▶2024年6月24日『ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会』
「更新研修を廃止し、必要な研修をタイムリーに開催することと、可能な限り研修時間を削減すること」を求めた。
▶2024年12月12日『ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会』
答申された中間整理には、NCCUが求めた“更新研修継続の前提”に関わる部分が削除された。さらに「更新研修については大幅な負担軽減を図るとともに、その在り方についても検討することが適当」といった文言が追加された。
▶2024年12月19日の参議院厚生労働委員会
NCCUと情報共有したUAゼンセン組織内議員の田村まみ参議院議員が、福岡資麿厚生労働大臣に対し、ケアマネ更新制の廃止を求めた。
▶2025年2月20日『第117回介護保険部会』
更新研修は、『ケアマネジャーを引退するきっかけになっている』との組合員の声を伝え、更新制の廃止も含めた研修体系・研修の在り方の抜本的見直しを早急に具体化するよう求めた。
このケアマネの更新制廃止は法改正が必要なため、来年1月からの通常国会で審議・成立する見通しです。引き続き動向を見守りましょう。
●持続可能性の議論が財源削減や負担増、サービス縮小の議論になってはいけない
議題3.「持続可能性の確保」
『ケアマネジメントに関する給付の在り方』や『軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方』『被保険者範囲・受給者範囲』など、いわゆる“給付と負担”について議題が示されました。
今回、厚生労働省は、2024年度介護保険改正時に結論が先送りされており、今後どのように検討するべきかを論点として提示しました。
染川会長は、「これらの項目について結論を出すことを先送りしたという扱いになっているが、それぞれの項目について、介護保険制度の普遍化や介護を必要する高齢者や介護者への影響が大きいことなどから実施が出来ないという判断だったと認識している。
改めて2024年度改正に向けて議論をしてきた中で、懸念事項、障害事項となっていたことを解消できる具体的な方策やエビデンス等について示してもらいたい。
また、持続可能性の確保の議論が、言い換えれば財源圧縮のための負担の拡大とサービスの縮小に関する議論になりつつあることに違和感がある。介護保険制度上の無駄があるのであれば無駄は無くすべきで、利用者の生活に支障が出ない範囲で応能負担を見直すことや、2号被保険者の負担を薄める意味での被保険者の範囲の見直しについて必要性は理解しているが、それらに加えて税と保険料の割合の見直し等も含めて広く議論をする必要がある」と訴えました。
2027年介護保険制度改正の議論は、2025年12月末頃まで行われます。
NCCUは、各種調査結果や組合員の皆さんの声をもとに発言を続けていきます。
◆ ◆ ◆ ◆
今回の資料は 第127回社会保障審議会介護保険部会|厚生労働省に掲載されています。