12月15日(月)、「第131回社会保障審議会介護保険部会」が虎ノ門グローバルスクエア(東京都 港区)で開催され、染川会長がWEBで出席しました。
今回「とりまとめに向けた議論」を議題とし、約1年間に渡り検討されてきた各論点について、これまでに示された意見をもとに議論が行われました。
●財源負担割合、被保険者・受給者範囲の見直しの対応を
論点(1) 1号保険料負担の在り方
論点(7) 被保険者・受給者範囲
論点(1)では、これまで介護保険制度の持続可能性や現役世代の負担軽減などの観点から、65歳以上の被保険者(1号被保険者)の保険料負担について議論されてきました。
今回の資料では、もともと所得に応じて段階的に保険料を負担する仕組みであることや、その仕組みもたびたび見直しを行ってきたことが整理されました。
そのうえで、「最近の物価高でも、それに比例して年金生活者の所得は増えない」、「保険料をこれ以上増やすことは難しく、公費負担割合を増やすべき」といった意見から、『今後も負担能力に応じた見直しを継続して検討していく』という案が示されました。
また、論点(7)では、40歳以上64歳以下の被保険者(2号被保険者)の対象年齢を引き下げることについて議論されてきました。今回は、現役世代の負担を懸念する慎重論などから、『引き続き検討を行う』との案が示されました。
この二つの論点に対し、染川会長は「介護保険制度開始時との比較では、特に現役世代である2号被保険者の保険料上昇率が顕著となっている。こうした課題を踏まえたうえで、税金と保険料、国と地方、1号と2号被保険者などの財源負担割合を見直すことや、社会で介護を支えるという理念から、介護保険料を負担する者の範囲を見直すことなども含めて対応を図るべき」と改めて意見をしました。
●介護費用の実態を無視した所得基準見直しに反対
論点(2)「一定以上所得」、「現役並み所得」の判断基準
これまで、窓口負担が2割負担、3割負担となる所得の判断基準について議論されてきました。前回、第130回の介護保険部会では、現状の所得水準(単身世帯の場合280万円以上)を引き下げる案(260万以上から230万以上までの選択肢)などが提案されました。
今回、利用者への影響を抑える観点から、負担増に上限を設けることや、預貯金の要件の設定などの配慮措置、また預貯金確認については事務負担や正確性に配慮しつつ、自己申告やマイナンバー活用も含めて検討する案が示されました。
しかし染川会長は、「『一定以上所得』について、全世代型社会保障の考え方である『能力に応じた負担』に基づき検討するとあるが、これまでの議論では、元気高齢者も含めた高齢者全体の平均的な収支や預貯金のみを判断基準として示されていた。しかし、判断材料としては適当ではない。実際に介護が必要となった際は、公的介護サービスの自己負担に加え、インフォーマルサービスや衛生用品購入など、多くの費用が必要となる。
介護が必要となった時の家計収支をシミュレーションせずには適切な判断はできない。
前回も伝えているが、自己負担を2倍、3倍にすることによる高齢者への経済的ダメージは極めて大きいため、所得の判断基準見直しについては、もっと丁寧に検討・議論を進めるべき」と述べ、現時点で『一定以上所得』、『現役並み所得』の判断基準を変更することには反対」とする考えを示しました。
●ケアプラン有料化に向けた新類型の創設は理解できない
論点(5)ケアマネジメントに関する給付の在り方
ケアマネジメント給付の在り方について、2025年末までに結論を出す方針を踏まえ、“住宅型有料老人ホーム入居者向け”に“新たな相談支援類型”を設け、そこに利用者負担を求めることが提案されました。
これに対し染川会長は、「そもそも有料老人ホームなどでは生活相談等の相談支援が提供されることが前提になっている。そして、ケアマネジメントは正確には居宅介護支援であり、既に現場では日常的に相談支援をしている実態がある。
したがって、新たに機能重複する相談支援をメニュー追加して、自己負担を必要とする新類型を作ることは理解ができない。
また、ケアマネジメントに関する自己負担については、自己負担導入により懸念される副作用が払しょく・解消されない限りは進めるべきではない」と疑問を呈しました。
●軽度者生活援助の総合事業移行に改めて反対
論点(6)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
軽度者(要介護1・2)への生活援助サービスの総合事業移行について示され、引き続き包括的に検討するのはどうか示されました。
染川会長は、「これまで総合事業への移行により、介護予防サービスの従前相当サービスの単価が切り下げられ、従事者の処遇が悪化した事実があることや、要介護1・2は決して軽度者ではなく、専門職の介入がなければ介護度が悪化する恐れがある。これまで通り介護保険サービスとして実施するべきであり、総合事業移行については反対」と、引き続きの検討すること自体に反対意見を述べました。
2027年度の制度改正に向けた議論は大詰めを迎えており、同部会では年内に意見の最終的なとりまとめを行う予定となっています。
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今回の資料は第131回社会保障審議会介護保険部会|厚生労働省に掲載されています。